2013年3月11日月曜日

フジコ・ヘミングさん



このコンサートホールはこぢんまりしてるわりに三階席まであり、最上階の最後列(貧者のシートw)から眺めるとまるですり鉢のよう。武道館ほど「転げ落ちそうな」感覚は、ないけどね。

中途半端なPAを排し、生音なのが潔い。ピアノの椅子のきしみやキーの音がここまではっきり聴こえる。ダンパーペダルの音の濁りと残響があいまって、まるで蓄音機で聴いているような不思議な感覚。ま、弾くのがフジコさんだしなぁ・・・

今回の白眉はなんと『展覧会の絵』。もちろん全曲、クラシックでは当たり前w

彼女の「展覧会」に掲げられた絵は、噴水で遊ぶ子供たちのおふざけがすぎてあたり一面水びたしにするわ、ポーランドの牛車かと思ったら日本の平安時代のやつでしかも縮尺まちがえてやたらでっかいのが出てきちゃうわ、地下墓地に下りたらショパンが「呼んだかぁ?」と出てきて、でもよく見たらシューマンで「お呼びでない」とばかり袋だたきにあうわ、ホウキに乗った魔女がほろ酔い加減でスィング踊り始めちゃうわ・・・アタシゃひとりで腹抱えて笑い続けてた(良い意味だ!)
エンディングの「ゲート」はそれはそれは端正で、さほど大きくはないが歴史を感じさせる綺麗な門だった。誰かが「あ、珍百景だ!」と叫ばんかな?と期待するが、そこは高尚なおクラシックのコンサートwww

それにしても、グールド亡きいま、こういうピアノを聴かせてくれるのはフジコさんしかいない。エキセントリックにみえて実は作曲家の意図を並みの演奏家以上に汲み取っていて、「ね、この和音が欲しかったんでしょ?」「右手がこう弾いたら、つぎは左手がこう動くべきでしょ?」「このカウンターメロディがあるから、この曲が活きるんじゃない?」彼女はつねに正しいのだ!
突拍子もない例えで恐縮だが、まるでKISSのロックンロール・ショウを観てるよう。
「はい、ここでキメいきますっ!」「ここでコーラス連呼しますっ!」「ここでこう盛り上げといてパイロ(火柱)で大団円ですっっ!!」ショービジネスの王道を惜しみなく披露し、凝りに凝ったシカケが手に取るようにわかる。そして、観ている者を決して飽きさせないのだ。

おまけに二部構成の後半は、若手バイオリニストとの共演!
バイオリンの伴奏を弾くフジコさんなんて滅多にみれなさそうで期待大。ただし、おとなしくバックで追従する彼女ではないw
何せ演目はバイオリン・ソナタとは名ばかり、実はバイオリン一本を従えたピアノ協奏曲であり「バイオリン殺し」の異名をとるベートーヴェン『春』www

でも、若くて(40代だけどねw)モテそうな男性バイオリニストは、格負けしながらもよくやってて、「共演」というのはこういうもんだな、と実感。
珍しく中低域がすごいキレイなバイオリンだったので、アンコールはベタだがぜひ「ゲーセン(ゲームセンターではない。『G線上のアリア』だ)」が聴きたかった。

なんだかんだで満足な一夜・・・

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