2013年3月1日金曜日

オヤジだから昔話が多い

新卒で入社したのは珍しく地元で編集職に携われる出版社・・・といえば聞こえはいいが、支店も無い同族の中小企業で、営業は行商隊を組んで全国を行脚する3K(死語)企業。都合よくかり出されただけで名ばかりの「営業研修」の果てにやっと配属された編集部も、過酷で劣悪な労働環境だった。

ただ、営業で東京行かされたときは天国だった。こっちも若くて何もかもが新鮮なもんだから、仕事終わってさて茶水の楽器屋行こか神田の古書街廻ろうかと遊び呆けたもんだ。
まだ六本木の「WAVE」がお洒落な情報発信基地(ぷっ!)として健在で、かなりマニアックなジャズ(とくにヴォーカル)のLPがあるので、「上京の目玉」的な感じだった。

同期の同僚と六本木WAVEをひとしきり堪能して(といっても、これといって趣味を持たない同僚は何を探すでもなく、店舗の広さと商品の多さにただただ圧倒されていたw)、さてまだ時間があるからひと歩きしつつ、どっかで店探して夕飯でも喰いますかぁ?ということで、当てもなく乃木坂辺りまで歩いたら、(旧)防衛庁の向かい当たりに「台湾小皿料理」という新しい小洒落た中華料理店があった。

ちょっと敷居が高そう(つまり、値段が高そう)かと思ったが、さすがにお腹もすいてるしお互い「もう社会人だから、いいよね?(意味不明w)」的にふらふらと入ったら、これが意に反して大当たり!
いまでは一般的になっている「小皿料理」のハシリで、しかもお手頃価格。北京ダックが手塩皿みたいなのに3〜4枚で、500円ぐらいだったかな?
ラーメンも湯呑茶碗みたいな小さな器にかわいく盛りつけられていてチャーシューが1枚入って200円しなかったと思う。いまの感覚でもかなり良心的だな。

ウェイトレスはみなよく気が利くきれいな中国娘で、色とりどりの艶かしいチャイナドレスに身を包んでいた。40〜50坪(もっとか?)ありそうで真新しくて明るくキレイな店内は賑わっていて、日本語と中国語が入り交じり活気に満ちていた。

面白かったのはフロアの奥がちょっとしたステージになっていて、生演奏していたこと。しかも、白いポロシャツにジーパンみたいないかにも留学生然とした色白で線の細いおにいちゃんが2人、ギターとベースで、黙々とインストを弾きまくっていたのだ。
大して上手いわけではないが客をあおったりウケをねらったりせず、わざとらしい中華風とかつまらんカヴァーをやるわけでもなく、ひたすら淡々と演奏を続けていた。変にバンドっぽくなくて、そこにも好感が持てた。
ちょうど、3コードでブルースを抑揚なく延々と弾いたり、盛り上がりのないまま1コードで10分ぐらいセッションしてるような感じだった。

抑揚ないインプロヴィセーションがだらだら耳に入ってくると妙なトランス感覚になるのか、それが意外と心地よくて同僚とも話が弾む。やがて、ふと音が鳴ってないのに気がついて「あれ、彼らどうしたんだろ?」とステージを見ると、演奏を終えた彼らの姿はもうそこにはなかった・・・

その店は当時、全国版のグルメ情報誌とかにも取り上げられていたが(しかも、我々が訪れたのは本当に開店して間もなくだったらしい)、さすがにもう無いみたいだ。
もういっぺん行きたかったんだけどなぁ〜

前置きが長くなって恐縮だが(前置きだったんかぃ、おい!?)、カフェや呑み屋さんでライヴをさせてもらうとき、あのおにいちゃんたちのような空気感でBGMっぽい演奏が出来たらいいなと、いまだに思っている。

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