2013年9月2日月曜日

長く曲がりくねった紆余曲折な道

さて、「びぃとるおぢさん」な時間です(自暴自棄)

ご存知、名曲「The Long And Winding Road」。
アルバム『Let It Be』の白眉であるとともに、作曲者ポールの意向を無視したコーラス&オーケストラのオーバーダブで、ビートルズ解散の一因にもなったいわく付きのナンバー。

実際の「紆余曲折」な顛末のすべてをここに記すスペースはないし、さすが甲虫マニアの恐ろしさで詳細な研究記事がweb上にも溢れているので、ざっくり本当にざっくりお話しすれば・・・

メンバー間が次第に険悪になり解散の影がちらつきはじめたビートルズは、状況打破のため「原点に帰る」をコンセプトに、オーバーダブなし一発録りのアルバムを制作してから心機一転のワールドツアーを企画する。
アルバムはともかくツアーの計画は二転三転し、一度きりのコンサートやスタジオライヴと揉めに揉めるが、最終的にリハーサルを含むドキュメンタリーをTV番組にすることになり、1969年1月2日にトゥイッケナム・フィルム・スタジオで録音&撮影が始まる。
ところが、ふだんのレコーディングスタジオと勝手が違い、やりにくくてメンバーは戸惑う。おまけにだだっ広くて暗くて寒々としていて、陰鬱な気分にさらに追い打ちをかける。
これじゃあかんとレコーディングスタジオに戻るが、そこは古巣のアビーロード・スタジオではなく(自分たちの専用であるはずの)アップル・スタジオ。しかも、当時「最新鋭」を誇っていたはずの設備が、まともなレコーディングに使えるものはほとんど無いことが判ってさぁ大変。とりあえず大急ぎで機材を間に合わせてセッションが続けられたが・・・
こうして、解散へのカウントダウンは着実に進んでいった、と言われている。

で、「The Long And Winding Road」である。

海賊盤のアウトテイクを除けば、公式な音源として「2種類」現存している。
  • ひとつは、この曲のリハーサルが始まった1969年1月26日のテイク。フィル・スペクターのオーケストレーションが施され『Let It Be』に収録されたバージョンの元になった演奏。『Let It Be』以前の幻のアルバム『Get Back』にも収録されていて(もちろんオーバーダブなし)、現在では『Anthology 3』で聴くことができる。
  • もうひとつは1969年1月31日に録音されたもの。この日でいちおうの完成をみたとされる。収録場所は両日ともアップル・スタジオ。オリジナルアルバムのリリースから30年以上経過して姿を現した『Let It Be... Naked』に使用されたテイクであり、映画『Let It Be』で採用されたのもこちら。
作曲者のポールとしては、もちろん31日のテイクを完成形と考えていたはずで、それなのにまだリハ段階だった26日のテイクが採用され、あげくのはてに「例の装飾」が施されたもんだから、そりゃおかんむり、といういきさつ。
とは言っても、26日31日の演奏に大差はない(と言ったら、コアなマニアは怒るだろうな)

明らかな違いがあるとすれば2点。
  1. 26日には、あのジョージ・マーティンが陣中見舞い(?)に訪れ、リズムギターのジョージにちょっとしたアドバイスをする。「いっぺん、アコースティックギターでやってみれば?」ただし、音に厚みと広がりを出すため生ギターにピックアップを取り付け(あるいはGibson J-160Eか?)生音と同時に鳴らしてステレオでパラってはどうか、と。そして、エレキ音の方はレスリー(ロータリー)スピーカーを通して録音された。ちなみに31日はこの時期のトレードマーク、総ローズウッドのテレキャスターを弾いている。
  2. 26日のテイクで、6弦ベースを弾くジョン・レノンは、エンディングの「Lead me to your door...」の部分で、本来Cマイナーで弾くべきコードを平行調のEフラットで弾く。アウト・オブ・スケールではないのだが、音源で確認すると、ポールのピアノは明らかにCマイナーで弾いている。そしてあろうことか、オーバーダブされたオーケストラはジョンのミス(という言い方は適切でないかもしれないが)のままのEフラットでアレンジされていた。
ポール師匠的には特に2番目は許せなかったと思われ、『ネイキッド』でやっと「借りを返した」といったところか・・・

おと〜さん的には、オリジナルアルバム『Let It Be』が強烈な原体験となっているため「別にフィル・スペクター・バージョンでいいんじゃね?」と思ってるし、オーケストラ抜きとしても、実は26日のテイクの方が積極的に好き。
それは、ジョージのあの気持ちいいカッティングが聴かれるからwww

フィル・スペクターのオーバー・プロデュースを悪く言う人もいるけど、それはまた別の話。
作業がフィルに預けられる前、アルバム『Get Back(プロデュースはグリン・ジョーンズ)の段階ですでに26日のテイクが採用されていたのは、それなりに「良い」と判断されていたからだと思う。
その決め手になったのがジョージのリズムギターではないかと、おと〜さんは推測する。
オーケストレーションされても、その合間をぬって刻まれるあのギターは実に効果的だった。まさかレスリー通したアコギとは思わなんだけどなwww

いまとなっては確かめるべくもなかろうが、もしそれが本当だとすれば、流石ジョージ・マーティン卿の「陰の助力」の賜物、というべきか???

アンソロジーでは生音とレスリーの音が片チャンネルにまとめられちゃって、面白さ半減なんよorz


2 件のコメント:

  1. ここまで詳しくないけど、このあたりの事情は吾も多少知っていました。
    でも、勉強に案りました。

    僕はもともとロックにオケが入るのは好きじゃないんで、
    一発録りの音が好きですね。

    とにかくビートルズはやっぱ凄い。改めてそう思います。

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    1. CHAMPさま
      われらが先輩、Tさんなら「このギター 意外と利いとる」と、ひと言で済ますでしょうけどね・・・
      存命のびぃとるが二人だけになった現在、「卿」の意向が最優先されるのはある程度致し方ないことだと思うんですが、本来なら「四人の合意」のもとに意思決定されるべきだというのは、多かれ少なかれみんな考えてることなんでしょうね。
      フリップ翁じゃないけど、「いままでのベースラインはわし、気に入らんかったんよ。ぜ〜んぶ、録り直すからねっ!」と言い出したら、それはそれでまた面白いような気もしますがwww

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