2014年2月19日水曜日

【ダミ声注意】

むかしむかし、カリブ海は西インド諸島の島国、バハマジョセフ・スペンスというじいさんが住んどった。

地元の漁師であり牧師でもあった父親のあとを継ぎ、海綿(天然スポンジ)の漁をやりながら、船の上で叔父からもらったギターを弾いて暮らしてた。

歩合の悪い漁師に見切りをつけてバハマの首都ナッソーへ移り住んだスペンスじいさんは結婚して、手先の器用さを活かして大工になった。
酒が好きで何かに束縛されることを嫌ったが、頑固なわりに根は真面目で、腕のいい職人だったらしい。

ギターを弾きながら唄う(っか、唸る)のはずっと続けていたが、縛られるのが嫌いだからプロとして生計を立てるのはごめんだった。
主に教会や仲間内の寄り合いで演奏していたが、噂を聞きつけた白人の小僧っ子がアメリカから録音しにやってきて、それが世の中に紹介されると、みんなブッ飛んだ!

Lay Down My Brother (I Bid You Goodnight)

曲はバハマのゴスペルだという。

ブルースに詳しい方なら、かのライトニン・ホプキンスブラインド・ウィリー・ジョンソン(ツェッペリン俺の罪』やライ・クーダーパリ・テキサス』の原曲とされる)が合体したような迫力に気けおされるだろう。

甚だ不適切な表現になるが「ア○中のホー○レス」を思わせる歌声はほとんど何を言っているか判らないし、慣れない人にはただのノイズでしかないかもしれない。

だが、ギターの奏でるメロディはこの世のものではないぐらいに美しい。
プリミティブな芸術というのは、こういうことを言うんだろうなぁと思わせる。

ツアーの誘いも引く手あまただったようだが「飛行機嫌い」をタテに首を縦に振らず、一生職人として過ごしたスペンスじいさん。
でも、演奏を見に来る観光客のためには、喜んで港まで出かけて聴かせてやったという。

先述のライ・クーダーをはじめ但馬ハルタージ・マハルネヴィル・ブラザーズなどプロのミュージシャンでもリスペクトしている人は多く、一時期はグレイトフル・デッドもこの曲をステージのクロージングテーマにしていた。
アタシが初めてこの曲を知ったのは、英国のフォークシンガー、ラルフ・マクテルの演奏だった。

洋の東西を問わず皆が敬愛したギター&ボーカルだったが、愛する伴侶である嫁さんは常々「あんた、もう少しキレイに弾きなさいよ。みんな分かんないじゃない?」と言ってたらしいんだが、当のじいさんはそのたびに「ワシゃこれでえぇんじゃ」と笑ってたらしい・・・


スペンスじいさんは短期間アメリカの農場で暮らしてたこともあるらしいが、
いわゆる「ブルース」の洗礼は受けず、地元バハマの民謡やゴスペルを主な
レパートリーにしていた。ブルースオタクにはその「ヌケの良い明るさ」に
違和感を覚えるかもしれないが、根っこの部分は共通するものがあると思う。

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