2012年8月19日日曜日

秘すれば花

今回は写真ないよ〜

10年ほど昔の話だが、知り合いのJAZZ喫茶のママさんが「最近、『花伝書』読んでいるの。このところ、西海岸ジャズが好みなんだけどさ、アレは『花伝書』の精神よね〜」と言っていた。

西海岸ジャズ、というのは、'50〜'60年代にハリウッド絡みでロサンゼルスに集まったおもに白人ミュージシャンたちの音楽のことで、ニューヨークを拠点にしていた黒人ミュージシャンに対比してこう呼ばれた。別に人種的な対比ではないので誤解なきよう。
一般的には、東海岸(NY)は熱い即興演奏が主体のいわゆる「ジャズらしい」ジャズで、対する西海岸は緻密なアレンジやアンサンブル中心の、いわば「映画音楽」みたいなイメージがある。
ジャズはもともと黒人が生み出したということもあり、それをどう「模倣するか」みたいな方法論ととらえると、『風姿花伝』の教えに通じるところがある、ということだったのだろう。

こちらも影響されてイヤナニ文庫など買って読み始めたのだが、いざ読んでみるとそれ以上に深い精神論でいたく感激し、何度も読み返したもんだ。

今となっては手元に本などほとんど残っておらず、読むこともめっきり減ったんだが、折に触れて『風姿花伝』は読みたくなる。手っ取り早く「青空文庫」で見ちまおっかなと思ったら、権利の関係で収蔵されてないのね・・・
それで、読めるところをさがしてみました。あとから調べたら、Wikipediaからもリンクかかってた。部分的な現代語訳や解説もいろいろあったが、いちばん的を得ていると思われるのは、こちら

読んだことない方も、ナナメ読みぐらいはぜひ目を通していただければ、その奥深さに驚くことと思う。同じ一つの文言でも、実践的な教訓から根本的な精神論までいかようにも捉えられるし、どう解釈しようが、たぶんどれも間違っていないのだ。

スロー・ブルースを演奏することが多かった晩年のマイルズ・ディヴィスは、自分のバンドのメンバーに「ブルースを弾くんだ。ブルージーには、演奏するな」と口を酸っぱくしていたと聞くが、これはまさに『風姿花伝』の神髄だよね。
ほかにも例えば、故・いかりや長さんの「笑い」と志村けん師匠の笑いの「本質」の違いとか、昨今の子役ブームの裏側とかいろんなものが見えてくる、って、よけい判らねぇか・・・

われわれ素人ミュージシャンの拙いステージングにも、得るところは大きい。その場にいるすべての人々のなかで、シナリオを把握しているのは唯一、演奏者である自分たちだけなのだ。まさに「秘すれば花」というワケ。
また、僭越かつ手前味噌なハナシだが、おと〜さんのオリジナル楽器であるチェロ・ベースのノウハウも、「秘すれば花」でございましてねぇ〜www

ところで、ここで最初に戻るが、「黒人のジャズを真似る白人」みたいな短絡的な構図で理解した気になっていると、足元をすくわれることになる。
実は当時、西海岸で活動していたアフロ・アメリカンも多かったし、西と東の両方で活躍していた人もいた。ところが、同じミュージシャンでも、西にいるときと東にいるときでは、大きくプレイスタイルを変えていた。耳で聴いただけでは、その演奏が黒なのか白なのか判別できない。
また、偉大な黒人ジャズ・ミュージシャン、たとえばアタシの大好きなレスター・ヤングやマイルズ・ディヴィスといった巨匠たちがいるが、彼らが初期に影響を受けたとして名を挙げていたのは、意外と古い時代の白人ミュージシャンやシンガーだったりする。突き詰めれば突き詰めるだけ、どっちが主流でどっちが模倣かすら、だんだんあやふやになってくるのだ。

ましてや、われわれのような黄色いヒトたちがそれを演るとなると、もうなにがなんだかよくわからない。アタシゃ、ズージャ屋ぢゃないしねぇ〜
ま、それぐらい深遠な世界なのだよ、ということで・・・

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