2019年1月5日土曜日

【ま閲に覧あ注っ意く】大海坊

・・・海坊主ではない。ただの変換ミスである

さて、お迎えしてしまった Martin Style-2 Uke (1910's) のレビューであるが、その前に、マーチンウクレレについて、ざっとおさらいしてみよう

現在でこそ楽器屋の店頭に新品でふつうに並んでいるC.F.マーチン社のウクレレだが、1970年代の終わりから2000年までは、一部のカスタムオーダーを除いて市場から姿を消していた*
最初に試作が行われたのが1907年というから、ウクレレという楽器が誕生してから間もなくのことだが、当初はギターを意識しすぎたかスプルース・トップでガチガチにブレーシングが施され、とてもウクレレと呼べる代物ではなかったらしい
ハワイアンコアが主流の本場ハワイ製に対して、マホガニー材を用いて本格的に生産に乗り出したのが1916年という**
本国でのハワイアンブームやティンパンアレー(いわゆるジャズ小唄)の流行に乗って1920〜30年代に黄金期を迎え、一時期はギターを凌ぐほどの需要があったようだが、その後のサーフミュージック・ロックンロールの台頭により出荷が激減。60年代後半より徐々に生産ラインから姿を消すに至るわけだ
黎明期のマーチンウクレレは試行錯誤が続いていたようで、度重なるマイナーチェンジがあるが、とくに生産が開始された1916年から1920年代にかけてのモデルは、それ以降とは大きく仕様が異なっている
加えて、クラフトマンシップが大いに発揮された時代の産物であるため、職人の胸先三寸的な個体差も見られ、量産品でありながら一種ハンドメイドのようなテイストを醸し出している
さらに、木材も今では到底入手困難な良質なものがごく当たり前に使われていた
まさに「佳き時代」の遺産と言えよう
*2000年に「S-O Uke (現在廃版)」として復活を遂げる以前に、トラベルギターの「バックパッカー・ウクレレ」が作られている。ともにメキシコ工場製
**後から上位機種として各々ハワイアンコアのモデルも作られている

それでは依頼品を見てみよう(違)

ヘッド・ロゴやサウンドホールのラベルは無く、刻印のみ
裏板にうっすら鉛筆書きで"1919"と読める気もするが
短絡的にそれが製造年だと言えるかどうか?

木製ペグは1926年までの仕様だが、このシンプルな形状はさらに初期型
右上はしげちよさんのペグ。こちらはエボニー製と言われることが多いが、
実は染色したメイプルのようだ。ともにヴァイオリンのペグを流用しているらしい

ナットとサドルは、おそらくボックスウッド材
さらに古い初年次型はサドルとブリッジが一体化したブロックになっている
1920年代に入ると、エボニーナット&サドルに変更される

継ぎ目の無いマホガニーのワンピースネック。握りは極薄のUシェイプ
指板は限りなく薄く、特徴的なバーフレット(I型)は減りも少ない

小振りなポジションマークが5・7フレット、そして9フレットに打たれている。まさに
1910年代製の証。指板はハカランダかどうかよく判らないが、エンド部の仕上げが見事


ボディはしげちよさんより5mmほど薄く、トップ&バックは継ぎ目なしの薄い一枚板だ
重さはなんと、驚異の250g!
多少のほころびは見受けられるものの、目立った補修個所は無し
オーバーラッカーも施されておらず、奇跡のオリジナルコンディション!

楽器屋のHPでは「"うぶ毛"のような」と表現されていたが、決して誇張ではない
私はつねづね「薄紙が震えるように鳴る」ウクレレが好きと言っているが、まさにそれを具現化したような一品
最初から極細のナイロン弦が張られていた。前オーナー、よ〜く分かっていらっしゃる
そんな弦でも腰の弱さを一切感じさせず、ほんの少し触っただけで即座にポーンと大きな音が出て、ボディやネックに快い振動が伝わる
これはさすがに未知の領域だった!弾くのにチカラが要らないんだ
しかも、その音色は大甘!中音域を強調しつつも張りを失わない
そして絶妙なリバーブ感・・・
こういうのを典型的なマーチン・サウンドと、言うのだろうな

はてさて「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」なこの逸品!
お披露目を乞うご期待!!

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