2019年1月14日月曜日

飾り気なさの極致


舞台上にポツンと椅子がひとつだけ、なんて飾り気ないステージなんだ・・・
年末に観に行った第九の会場でもらったパンフに、そのときの指揮者である鈴木秀美センセがバロックチェロでバッハの「無伴奏チェロ組曲」を2回に分けて全曲演奏するとの告知が!
しかも、第一日目は私が好きな第1番・第3番・第5番の三曲
ここで知ったのも何かの縁、ぜひ行かねば!!

第九の会場から目と鼻の先の距離なのに、うって変わって300名ほどの小ぢんまりしたホール。もちろん完全生音で(クラシックでは、ほぼ当たり前。実はそうじゃないケースもあるんだが、おっと笑)
たまたま二階席だったのだが、一階の客席の物音すら手に取るように聴こえる響きの良さ

チェロはチェロでもバロックチェロ。古楽が好きでずっと聴いてきたが、実際に観るのは初めて
ふつうのチェロは本体から長いエンドピンが出ていて床に置くのだが、バロックチェロには、それがない。どうやって安定させるかというと、ひたすら両膝で挟みこむのだ。それだけでも大変そう笑

颯爽とした指揮ぶりを見せてくださったセンセが、今度はそんなバロックチェロと古いスタイルの弓を持って舞台に現れる
以前も書いたが、古楽の演奏者の方々は、あまりテンポを崩さず早めに淡々と演奏することが多い。緩急を大きく動かしたり抑揚をつけるのは、比較的新しい奏法だからだ
ところが、まるでモダンの演奏家のようなドラマチックな演奏だったもんだから、期待を裏切られた。もちろん、いい意味で!
そのわりに大袈裟なビブラートは抑えていて、やはりが古楽ルーツにあることは如実に感じられる
楽器やスタイルは古楽に準じていて、それをないがしろにするつもりも無かろうが、いまこの時代に演奏しているのだから、それにこだわりすぎても堅苦しくなるだけ。いったんとことん追求した人間だからこそ、それを突き抜けたところですべてをかなぐり捨てて自分の生き様をぶつけて勝負する。そんな演奏だった
ミスタッチやボウイングのノイズは見受けられたが、それもライヴの醍醐味。全身全霊を賭けた、素晴らしいステージだった

三曲弾き終わって何度目かのアンコールに出てこられたとき、「自分でいろいろ思うこともあり、体調もあるもんだから、弾くのはもうこれきりで辞めよう辞めようと思って毎回ステージに立つんだけど、弾くと納得いかないところが出てきて、やっぱりまた弾きたくなっちゃうんですよね」と、コメント
「あっ、今日もところどころヤバいとこあったけど、体調とは関係ないからね」会場爆笑
「アンコールであまり弾いちゃうと、次回弾くものが無くなっちゃうんで、予告編代わりに・・・」と第4番の「サラバンド」を
これがまたリラックスした、素敵な演奏でした

至福のひととき。ええ、次回も買いましたさ、早速・・・笑

この流れで「おこがましさ」の極致なんだけどさ、むかし自分がチェロベースで弾いたやつを貼っとこ。あまりに不遜なのでリンクだけな笑
国内では一切反響が無いが、海外でバズられまっくてる(?)希有な演奏だ

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