2012年12月12日水曜日

何から何までうろ覚え

たしか、英国の女流ミステリ作家ポーラ・ゴズリングの『負け犬のブルース』だったと思う。
ハヤカワ・ポケット・ミステリ版の翻訳者が小泉喜美子さんだったと思うが、「あとがき」が、たしかこんなふうに始まっていた・・・
ジャズを聴いたことのない皆さんにも、ぜひこれだけは聴いてもらいたい曲があります。それは、マイルズ・ディヴィスの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』という一曲です。
そして、たしか植草甚一氏のジャズ評論を引用されていて、「都会の喧噪がどうたらこうたら・・・」などと続いていたように記憶する。

当時(とはいっても、古書で入手したのでかなりのタイムラグがあったろうが)ジャズをかじり始めた小生意気なガキだったおと〜さんは、天邪鬼な性格に似つかわしくなくもすぐに行きつけの中古レコード屋に走り、「ラウンド・アバウト・なんたらかんたら」を探したものだ。

ところが幸か不幸か、マイルズの棚には『サークル・イン・ザ・ラウンド』という編集盤しかなかった。見ると、たしかに曲目表に「ラウンド・ミッドナイト」とは書いてあるのだが、「アバウト」が抜けている。同じ曲なのか?

まぁ、マイルズを聴き始めるのに何か取っかかりが欲しかっただけだし、アルバムタイトルも「ラウンド」だし、二枚組だが中古LPなんでそう高くもないし、とにかく買って帰って早速聴いてみた。

たね明かしをすると、この『サークル・イン・ザ・ラウンド』というのは、マイルズの引退期間中に編集された埋め草盤だった。はっきりいって冗長なボツ音源ばかりで統一感も何もない。ただ、おと〜さんが見つけたのは国内盤の二枚組だったが、このうちの1曲が発売直前に出た別のLPに日本盤ボーナスとしてすでに収録されてしまっていたため、急遽、別の曲に差し替えられていた。
で、この国内盤だけに収録されたのが、よりによって「ラウンド・(アバウト)・ミッドナイト」だったわけで、ともかくも当初の目的は達成されてめでたしめでたし・・・

と思われたが、ジャズに詳しい方ならご存知のように、マイルズの「ラウンド・ミッドナイト」といえば、かのジョン・コルトレーンをテナーサックスに擁したCBSコロンビアでのデビュー盤が超有名。もちろん、小泉さんそして植草氏が指していたのも、間違いなくそれであろう。
ところが、『サークル〜』に入っていたのはコルトレーン脱退後、ハンク・モブリーという、本来ならいぶし銀の職人肌なのに何故かマイルズのグループではいじめられ続けていた不遇のプレーヤーが在籍時に、「ブラックホーク」というクラブでのライヴ録音のアウトテイク(当時)という、何から何までビミョーにバッタモンだったwww

ただし、これが大外れかというと全くの逆で、聴けば聴くほど味がある。
演奏開始とともにバックで聴こえるクラブの観客のノイズが生々しいライヴ感を煽り、マイルズのミュートは本当に真夜中を切り裂くクラクションのよう。
有名なユニゾンのブリッジにこれでもかと被さるハイノート(実はコルトレーン脱退直前からの新アレンジ)のあとに、自信なさげに(?)カットインしてくるハンク・モブリーの朴訥さが大都会の寂寥感と見事にマッチしている。

ま、とにかく、こんなもん刷り込まれちまうと、あとが大変だったわなwww

当然、つべで探そうとしても、あらかたコルトレーン共演テイクばかり。しかも、それだって幾種類もある。
が、奇跡的にそのモブリー版があった!
たぶん最初に国内盤でCD化された音源で、それ以降は選曲が米国オリジナルに戻っていて「〜ミッドナイト」は姿を消しているはず。
おと〜さんが最初に聴いたLPとは微妙にミキシングが違うのだが(LPでは、冒頭にグラスの氷のリアルな音まで聴こえたと思う)、なんとなくニュアンスが判って頂けるのではないかと思う。


悪りぃな、病み上がりで抑えが利かなくて・・・

1 件のコメント:

  1. よく考えてみたら、リンクした音源は『サークル〜』の後に出た、別の編集盤に収められたものだった。輸入盤のジャケ違いと思ってた・・・
    つまり米コロムビアはCBSソニー(当時)に、1曲「前貸し」してたわけだ。
    ホントにうろ覚えのハナシで、すんません

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